No.265【少女漫画】

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その頃の漫画雑誌の定番といえば〈少年マガジン〉〈少年サンデー〉〈少年キング〉などであった。

片や少女漫画では〈少女フレンド〉〈マーガレット〉〈なかよし〉などが人気だった。

僕は当然少年漫画に夢中で、やたらに目のデカイ女と、女のような男が登場してはイチャイチャする少女漫画などには見向きもしなかった。

ところが、〈少女フレンド〉に楳図かずおのホラー漫画が登場し始めてからは、それを見たさに、〈少女フレンド〉を手にする機会が増えていったのだった。

最初は〈ホラー漫画〉だけを読んで、他の女性作家の漫画はあまり読まなかったのだが、それでも徐々に少女漫画に触れていくにつれて、本当はシッカリとしたストーリーとドラマが描かれているということが分かってきたので、次第に読むようになっていったのである。

単に、お姫様が倒れているところへ美しい王子様が現れて姫を抱き上げキスをする、というような単純なものではなかったのだ。後の〈池田理代子〉や〈里中満智子〉らの台頭によって、少女漫画の地位が飛躍的に向上したのも頷けるというものだ。

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さて、当時、中学生だった僕は体操部に所属していて〈副キャプテン〉をやっていたのだが、実は女子体操部に、密かに想いを寄せていた女の子がいた。けれども、とても告白することなど出来ずに黙々と練習するばかりの日々が続いていた。

そんなある日の夜、僕は夢を見た。

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《手のマメが潰れて痛いのを我慢して、僕は鉄棒の大車輪を練習している。ところが手が滑って落下してしまう。気絶した僕のもとには憧れのあの子が駆け寄ってきて「大丈夫❗️?しっかりしてっ❗️」と手を握って介抱をしてくれる》そんな夢を見たのだった。

その〈夢〉のシチュエーションといったら、なんだかんだと言っても男女が入れ替わっただけの、少女漫画の定番シーンそのものではないか。〈少女漫画〉を鼻で笑っていた僕がそんな夢を見ては胸をときめかせているのだから、まったくもって世話はないのだ。
(イラストは、引用したネット画像を手描きしたもの)

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