No.267【高速道路の変】

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その日は、出張先の奈良のホテルを朝早く出て〈西名阪自動車道〉を〈山陽自動車道〉方面に向けてクルマを走らせていた。

朝の出勤時間帯だったので、カーナビのVICSは渋滞の警告を表示している。道路脇の道路情報を知らせる電光掲示板にも渋滞の知らせが出ている。高速道路の所々で受信出来る、NEXCO西日本の道路情報ラジオ1.620kHzを聴いても渋滞の情報を流している。

《なんだよ、朝は高速道路も通勤族で渋滞するんだなぁ。もうチョッとユックリして出ればよかったなぁ》

そう思ったが後の祭りだった。

さて、渋滞をなんとか掻い潜って、クルマが〈西名阪〉から〈近畿道〉に入ろうとしていた時であった。

あれだけ何度もトイレに行ってからクルマに乗ったにも拘わらず、突然〈便意〉が襲ってきたのである。周りを見渡しても相変わらず沢山のクルマが走っていて渋滞が解消される気配はない。

実は、僕は3年前に〈大腸癌〉の手術をして下行結腸を10cmばかり切除したので、大腸が人より少し短くなっているために、その影響からか大腸での〈便〉の保留が難しくなったように思うのだ。

要するに便意があるとすぐに出そうになるのだ。我慢がし難いということなのだ。
それに付け加えて〈下痢〉もし易くなってしまったので遠出の時には要注意なのだ。

次第に押し寄せる〈便意の波〉が激しくなってきた。

《あ゛~~っ❗️ヤバイッ❗️グ~~ッ!オムツが欲しい~っ❗️》

もう泣きそうになりながらの闘いが始まった。

《どこかの出口から降りて一般道に降りてトイレを探そうか?いや、そんなことをしたら、トイレが見つかるまでにアウトだ。ヤッパリ〈SA〉まで我慢したほうがベターだ。でも経由する中国自動車道の〈西宮名塩SA〉まで〈SA〉がないじゃないかっ!》

心は千々に乱れる。

祈りながらの運転が続いていたところに道路情報の電光掲示板にダメ押しの〈悪魔の表示〉が表れた。

『近畿道この先事故のため8キロの渋滞』

《❗️・・・なんてこったっ❗️》

冷や汗を通り越して脂汗が出てきそうだ。輪を掛けて腹痛と便意が襲ってくる。

《いっそ路肩にクルマ止めようか?いや止めてどうするんだ》

・・・・・・・

長い長い闘いが続いた。

・・・・・・・

洩らすことなく奇跡的に〈西宮名塩SA〉に到着してトイレの便器に座った瞬間の安堵感といったら、腹痛をも吹き飛ばす程であった。

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