No.268【マグロな女】

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新婚時代に家内の実家に行った時である。結婚してからは初めてだったので、お義父さんもお義母さんも大変に喜んで下さった。

「お義母さん凄い御馳走じゃないですか!僕の大好きな蛸の刺身もこんなに沢山!ありがとうございます」

「いえいえ、大したもんじゃなくてごめんなさいね」

お義父さんにビールや酒を勧め、お義父さんからもビールや酒を勧められながらの楽しい宴が続いていたが、家内も結構イケる口なので一緒になって飲んでいた。

仲良くやっていることを両親に伝えて安心して頂こうと、僕は先日2人で飲みに行った時のことを話した。

「〇子は飲めるクチなんで2人で居酒屋にいったりするんですよ、なぁ〇子、こないだの居酒屋、なかなかよかったよなぁ」

「うん!あの店〈モツの煮込〉が絶品だったよね!チューハイも美味しかったわぁ」

するとお義母さんが言う。

「もう〇ちゃん!ホドホドにしときなさいよ」

「大丈夫よお母さんったら~ねぇ★★さん」

家内が僕に振ってきた。

「そうですよ、お義母さん!〇子は少々飲んでも崩れたりしませんから!でも、いつぞやの女子会から帰って来た時には流石に飲み過ぎたんでしょう、風呂場でマグロみたいにドテッ!となってましたけど、ハハハハッ❗️」

「ハハハッ❗️そ~ぉ?」

義母さんも笑っているのだが、なぜだか隣に座っている家内が、テーブルの下からソッと手を伸ばして僕の脚をツンツンしている。

・・・・・・・

〈ツンツン〉の意味が分かったのが、風呂からあがって用意して下さった客部屋に返り、家内の話を聞かされた時であった。

「も~ぉ!ダメよっ❗️お母さんは冗談なんか通用しないんだからねっ❗️マグロがドテッ!なんてっ!さっきお母さんに呼ばれて叱られたわよ」

「えぇっ!・・そりゃぁ悪かったなぁ、受けると思って言ったんだけどなぁ」

「受ける訳ないじゃん!脚ツンツンしたのに全然気付いてくれないんだからっ!」

《そうか~・・結構、厳しい躾をするお義母さんなんだ~》

そう思った。

・・・・・・・・

あれから数十年のあいだ家内とは夫婦をやっている。親の厳しい躾を受けて育った家内である。ヤッパリ間違いの無い女だった・・・ということにしておこう。

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