
ピアノの演奏会などで、プロのピアニストが弾くピアノを調律する調律師のことを〈コンサートチューナー〉という。
ピアノという楽器は定期的に調律をしなければならないのだが、年に1回の割合で調律を施すのが一般的である。ピアノ調律技術者から見れば、もっと短い周期で調律をして欲しいのだが・・・
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ピアノの弦は〈特殊炭素鋼〉で出来ている。その品質はあらゆる炭素鋼の中でも秀でていて、宇宙ロケットに使用される炭素鋼よりも優れたものらしいのだ。
日本のあるピアノメーカーが、宇宙船に使われる〈特殊炭素鋼〉で弦を作ってピアノに使用するという実験をしたそうだが、ピアノに使用している炭素鋼のほうが性能が良かったという。
そんな弦を使ったピアノなんだから少々のことでは音が狂わないような印象があるかもしれない。
ところが存外狂うのだ。
例えば〈バイオリン〉〈ギター〉などの弦楽器と比べればピアノの狂いかたは勿論非常に小さいものなのだが、半音の100分の1単位で微妙に狂うのだ。半音の100分の1を〈1セント〉という単位で表す。
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さて・・・〈フランツ・リスト〉だ。
演奏会のプログラムに〈リスト〉の曲が入っている場合は要注意なのである。
コンサートチューナーは精魂込めて調律をする。当然、音が狂うことなく演奏会が終ることを祈るのだが、リストの楽曲には特に肝を冷やす。
ピアノには〈ダンパー〉というもので音を止めるという機能が備わっているのだが、リストの曲は〈ダンパー〉を解放して高音部をフォルティシモで強く鍵盤を叩く箇所が結構多いのだ。
ピアノの高音部は強く弾くと狂い易い特性がある。1打で3セントくらい音が下がってしまうのである。楽曲の中での高音部は「謳う」ところなのだが、音が少しでも下がってしまうと、中低音との和音に、たちまちベル音の如くの唸りが生じて響かなくなるのだ。
そしてピアノは1つの鍵盤で3本のユニゾン(同音)弦を打つのだが、それが狂うと単音も濁る。
そんなデリケートな高音部のキーを、演奏家は〈ダンパー〉を外して容赦なくフォルティシモで叩くのだ。解放弦だから音が共鳴しまくって更に狂う確率が高くなるのである。
だから、コンサートチューナーは事前に〈楽譜〉を読んで、どの高音キーがフォルティシモで演奏されるのかを調べてそれを把握し、そのキーをマークして、徹底的に狂い難いように丹念に調律をして、本番の演奏に臨むのである。
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げに悩ましきは〈フランツ・リストの楽曲〉なのだ。
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