No.33【外車】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.08.18 私は若いころ楽器店に勤めていた。その日は他の従業員は営業で外に出ていたので、社長と私と二人で店番をしていた。するとガラス越しに見える表通りに、彩やかな緑色の見慣れぬ形のクルマが店側に横付けして停車し、中から馴染み客の青年が降りてきた。この青年は町の有力者の御曹司である。「社長~っ!おはよう。ギターの弦ちょうだいや。ライトゲージは響かんので、ミディアムゲージにしてみるわぁ」「おはよう!そりゃそうとクルマ換えたんか?」「あぁ、あれ?うん、換えた」御曹司は、別段、大したことではないという風情だ。「見たことないクルマじゃが」「BMWの2002いうんよ。普通はマルニって呼ぶ人が多いかなぁ」「外車かぁ?」「うん、ドイツのクルマ」街で外車を見掛けるなどほとんどなかった時代である。社長は興味津々だ。「ちょっと運転席に座るだけでもええから座らしてくれんかなぁ」「ええよ~なんぼでも座って」喜んだ社長は表に飛び出して行ってニコニコしながらドアを開け、運転席に座り込んで驚いた。「ハンドルがない‼️」BMWは左ハンドルだった。
コメント