No.587【名刺交換】

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3歳年下の弟は、還暦を過ぎた今でも尋常ではないほどに若く見える。

大手スーパーに就職して定年まで勤め上げ、退職後は嘱託社員として勤務している。現役時代は本社の部長まで出世したのだが、取締役寸前のところで定年を迎えてしまったようだ。元々が一族経営の会社なのだから、外様としては行けるところまでは行ったのだろうと思う。

タマに会うのだが、弟の若ぶりは今でも変わらない。黙っていれば充分40代に見える程なのだ。

そんな弟が現役時代に困っていたことがあるのだという。それは、部下を連れての営業回りで、相手側の会社の担当者と名刺交換をする時に起こるのだという。

先方は十中八九で弟の〈部下〉の方に先に名刺を差し出すんだそうだ。

名刺を受け取った部下が慌てる。

「あっ❗️ありがとうございます。あのっ!私は部下でございましてぇ、隣が部長の〇〇でございます」

先方も驚いて平謝るという、こういうことが度々あったんだと弟は苦笑いを浮かべながら話していた。弟自身は大して気にしていないのだが、先方さんに気を使わせるのが嫌だったようだ。

けれども考えようによっては、相手側に1つの借りを作ることになるのだから、営業には反って好都合だったんじゃなかろうかと思うのはゲスの勘繰りだろうか・・・

それにしても、女性が若く見られるのは嬉しいばかりだが、男が若く見られ過ぎるというのは、チョッと考えものなのである。

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