No.588【ラジオ体操と少女】

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僕がまだ小さい頃である。

ウチのほん近所に、醤油や豆腐や野菜や駄菓子やパンやら、なんでも扱っている小さな商店があった。

僕はそこへよく遊びに行っていた。

そして、店のオバチャンと、オバチャンの娘で中学生のお姉ちゃんは〈耳掻き〉をするのが大好きで、2人にはよく〈耳掻き〉をして貰った。

僕は乾き性なので、ゴロゴロと大きな耳垢が出てきたから、耳掻きフェチには堪らない達成感があったようで、耳掻き台の僕を、オバチャンとお姉ちゃんとが取り合った。

耳掻きをして貰っていると近所のおばさんが買い物に来たりするのだが、買い物が終ってもおばさんがすぐに帰ることはない。

奥座敷の上がり口に腰掛けては店のオバチャンと世間話を始めるのがお決まりだった。

遊びに来ていた僕の耳にも、オバチャン達の話声が自然に入ってくる。

それは小学生の僕が聞いても興味を引くような、中々面白い話が多かった。

店のオバチャンは満州からの引揚者なので、中国大陸のことに詳しくて、中国語を交えて話す〈クーニャン(姑娘)〉の話なんかは最高に面白かった。

オバチャンが尋常小学校の少女時代の〈ラジオ体操〉の話も忘れられない。日本軍が真珠湾攻撃をする少し前の頃の話である。

・・・・・・・

〈尋常小学校〉では、毎朝、全校生徒をグラウンドに集めては〈ラジオ体操〉をやっていたそうで、男子生徒は上半身裸で、朝礼台の上の校長先生は褌一丁という格好で体操をするんだそうだ。

オバチャンは背が低いほうだったのでクラスの列では前のほうに並んでいるし、朝礼台の近くでもあったので、褌一丁で体操をする校長先生を下から見上げる形になった。

オバチャンが笑いながらお客のおばさんに話す。

「もう~それがねぇ~アンタッ❗️校長先生が脚を拡げる度にねぇ、緩んだ褌の陰からキン〇マが丸見えなんよ~ハハハハッ❗️ウチャあ可笑しゅうてねぇ」

当時、まだ小学生だったオバチャンが、恥じらうどころか笑ってキン〇マを見ていたことに、僕は抱いていた少女のイメージとはいささか異なるものを感じるのであった。

そして、お客のおばさんも腹を抱えて笑うのだが、女の人が平気でキン〇マという言葉を口にして笑い合っていることには少しばかりショックを受けたものである。
そうして、徐々に女性の実像というものを学習し始める、初な僕なのであった。

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