No.761【おかわり無料】

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これは長男が大学生の時の話である。

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大学の近くには行きつけのラーメン屋があった。そのラーメン屋のメニューには、何杯おかわりをしても追加料金が無料の〈白ご飯〉があった。値段は¥100―だ。

ある日、息子は金欠の友人達数人と一緒にそのラーメン屋に入ったのだが、ラーメンを注文する友人達を尻目に、ラーメンを注文する金さえも無かった息子だけが¥100―の〈白ご飯〉を頼んだ。

友人達の財布の中も寂しくて、息子にラーメンを奢るだけの余裕が無かったのだ。
やがて友人達が頼んだラーメンと一緒に息子の〈白ご飯〉もテーブルに運ばれてきた。

しかしいくら空腹とは言え〈白ご飯〉だけでは喉を越し難い。

ところが幸いなことに、テーブルの上にはラーメンのトッピング用として、壺に入った無料の〈高菜漬け〉が置いてあるのだ。息子はそれをオカズにして、何杯も〈白ご飯〉をおかわりし続けたという。

すると、とうとう調理場のジャーの中の〈白ご飯〉が底を突いてしまったのだった。

しかし、その店は貧乏学生への思い遣りか、はたまた単なる意地なのか、今度は〈白ご飯〉の代わりに、炒飯用にスタンバイしてあった〈炒飯〉を出してくれたのだという。

学生街にある、天晴れな人情ラーメン屋なのだった。

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