No.129【ライトプレーン】

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小学校6年の時である。図画工作で、ライトプレーンと呼ばれる、竹ひごと紙で出来た飛行機を作るという授業があった。
巻いたゴムを動力にプロペラを回して飛ばす飛行機だ。女の子も同じものを作る。
全員に同じ飛行機のキットが配られた。キットには同寸大の設計図が入っていて、竹ひごを蝋燭の火で炙りながら、少しずつ曲げていって曲線を出す。その都度、図面に描かれた曲線に合わせながら竹ひごを曲げていくのだが、火で炙り過ぎると竹ひごが燃えてしまうので注意が必要だった。難しい作業だ。
翼の骨組が完成したら、それに刷毛で糊を塗る。水で溶いた糊だ。
そして糊が乾かないうちに、薄い紙を両手で軽く引っ張りながら、出来るだけ皺が出来ないように貼っていくのだが、糊をベタベタに塗り過ぎると、紙が濡れて破れるので細心の注意が必要だった。
紙を貼ったら完成なのだが、どうしても皺ができるので、霧吹きで紙を軽く湿らせる。そうしておいて暫く乾かすと紙がピンと張るのだった。障子紙の張り替えと同じ要領である。
・・・・・・・
完成した飛行機は校庭で試験飛行をする。バランスが悪くて頭から突っ込んで墜落するヤツ、反対にお尻が重過ぎてヘリコプターのように上を向いて飛ぶヤツなど色々だ。シッカリと飛ばしたさに欲張ってゴムを巻き過ぎてゴムが切れることがあった。
《バシバシッ❗️》っと、切れたゴムがムチのように暴れて、主翼の紙をボロボロに破るのだ。初飛行どころではない。
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数日後の秋晴れの日、全員が校庭に集まって《飛行大会》というイベントがあった。
皆んなが見守る中、1人づつ順に飛ばすのだ。掛かりの先生はストップウォッチでそれぞれの飛行タイムを計る。飛行時間を競うのである。
私の番が来た。切れる寸前までゴムを巻いた飛行機を、斜め上に向けてスッと放つ。
《ブ~~~~~》
巻き戻るゴムとプロペラの音を残して機体が上昇ていく。
全員が見守る中、ゆっくりと円を描きながら上昇気流に乗ってドンドン高度を上げていく。やがて小さく見える程の高度になり、上空の風に流されながら、山の向こうの方に飛んでいって見えなくなってしまった。
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計測不能という記録で、私は優勝した。
けれども飛行機は山の彼方に飛んでいってしまって、2度と手元には戻ってこなかった。

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