No.188【鴉】

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伯父の趣味は猟銃で山鳥を撃つことだった。狩猟免許を取ってポインターという猟犬を3頭飼っていた。伯父の家に遊びに行った時には、玄関先の檻で飼われている大きなポインターが、小学生の僕にはとても怖かったことを覚えている。

撃ってきた山鳥をタマに持ってきてくれることがあった。父が山鳥をサバくのだが、羽をムシるところからやらなければならなかったので大変だった。味は鶏に似ていて結構うまい。けれども山鳥の肉の中には散弾銃の小さな鉛弾が混じっているので、食べているとガリッ!っときて、正直あんまり好きではなかった。

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ある日の夕方、伯父は猟銃を肩に掛けて河川敷に散歩に出た。当時は街中で猟銃を持ち歩いていても、なんのお咎めもないというような朗らかな時代だったのだ。

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河原の上空には数羽の鴉と鳶が飛んでいる。

なにを思ったのか、伯父はケースから猟銃を取り出し、空に向けて銃を構えた。そして1羽の鴉に照準を合わせて引き金を引いた。

「パ~~~ン❗️」

散弾銃の弾は見事に命中し、1羽の鴉がバサッ!っと河原の石の上に落ちてきた。
伯父は、落ちた鴉を確認すると、さあ帰ろうかと、銃をケースに入れようとしたが、なにやら上空に気配を感じたので顔を上げてみた。

すると先程までは数羽しかいなかった鴉が、どこから飛んできたのか、急に数が増えている。それはどんどん増えてきて、あっ!っという間に空を黒く覆い尽くす程になった。

《❗️・・・・・》

そして、その黒い絨毯は、徐々に高度を下げて彼に迫ってきたのだ。背筋に悪寒が走った。恐怖に駆られた彼はホウホウの体で逃げ帰った。

ヒッチコックの「鳥」を地でいくような出来事であった。

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