No.241【石投げ合戦】

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小学生の頃、よく河原に遊びに行った。その河原は大小様々な石で敷き詰められていて、所々には砂地や草むらもあった。

その日は6人で河原に来ていた。

当時の子供達はテレビの戦争ドラマ〈コンバット〉の影響を多大に受けていて、よく戦争ゴッコをして遊んだものだ。

町外れの小高い山にある公園では、山全体をフィールドにして戦争ゴッコをし、河原でも草むらに隠れながらの戦争ゴッコをした。

山では棒切れを銃に見立てた口鉄砲の戦争ゴッコなのだが、河原でのそれは〈実弾〉と〈地雷〉が使われた。

〈実弾〉とは石コロであり、〈地雷〉とは砂のことだ。敵味方に別れて石コロを軽く投げ合って、草むらを移動しながら戦うのだ。

陣地を移動する際、前もって〈地雷〉を設置しなければならない。敵が追っ掛けてきた時のためだ。

その〈地雷〉とはこんなものだ。まず、そこら辺にある流木の中から、長さ30cmくらいの板切れを集めてきて、砂にそれが埋るくらいの穴を掘る。そして穴の中央に卵大の石コロを置き、その上に板を乗せてシーソーを作る。シーソーの片側に砂をビッシリ乗せたらもう片方のムキ出しの板を草でカムフラージュする。それを何個もセットするのだ。チョッと見立ただけでは、砂地の上の只の草だ。

そうしておくと、後から追い掛けてきた敵がその〈地雷〉を踏んづけた時にシーソーが跳ね上がって砂が舞い上がる、という案配なのだ。

その日の戦争ゴッコは特に絶好調だった。3人対3人の戦闘だ。石コロを拾っては投げ拾っては投げしていると、案の定、双方が段々と興奮してきた。石コロを投げる力が徐々に強くなっていく。終いにはとうとう本気の石投げ合戦にエスカレートしてしまった。

皆んな意地になって投げ合った。小学生が投げると言えどもヒュンヒュンと飛んでくる石は怖い。

すると1つの石が友達の方に飛んできた。瞬間、放物線を目で追ったら弾道の先は明らかに友達だ。

友達は石を拾うために下を向いている。

「危ない❗️」

と、叫んだと同時に石は友達の左胸に命中した。

「おいっ❗️大丈夫かっ❗️」
「危なかった~!ポケットに入っただけじゃ❗️」

石はスッポリた左胸のポケットに入っていたのだ。頭に当たらなくてよかったと2人で胸を撫で下ろした。

・・・・・・・

当時の子供達の遊びは危険が隣り合わせだった。それがまた実に楽しかったのだが、本気の石投げ合戦をやるなんてとんでもない少年達だったのだろうか・・・

案外そうでもないのだ。例えば派手な喧嘩をして相手が泣いたとしよう、するともうそれ以上は殴らないという、〈武士道・惻隠の情〉の心根はしっかりと持った、実は優しい昭和の少年達なのであった。

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