No.337【邂逅の夏④】

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レストランに入ってはみたものの、彼女は下を向いて黙ったままである。

彼女に訊いてみた。

「あの~・・なに食べましょうか?」

「はい、なんでもいいです」

想定内の返事が返ってくる。

「・・じゃぁ・・エビフライが付いてるAランチでいいですか?」

「はい、Aランチでいいです」

・・・・・・・

〈Aランチ〉が旨かったのか不味かったのか、そんなことは覚えていない。

食べ終るとウェイトレスがやってきて、セットで付いているドリンクのオーダーを訊いてきた。

「コーヒーかオレンジジュースが付きますがどちらがよろしいですか?」

僕がコーヒー、彼女がオレンジジュースを頼んだ。

・・・・・・・

何も話さない訳にはいかないので、面白くもなんともない、超ド定番の質問を、僕は彼女に投げ掛けた。

「あの~趣味はなんですか?」

「はい、趣味というほどのもはありません」

「そうですか・・・僕はフルートなんかをかじっていますけど・・まぁ下手ですけどね・・ハハハ・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・」

それでもなんとか会話が成立するようになってきて、お互いの現在の状況を説明するまでになった。

そうして暫くのあいだ話していると、僕はなんだか不思議な感覚を覚えてきたのだった。

《この女性はたぶん僕の奥さんになる人なんじゃないだろうか?》

そして、話は僕の理性を飛び越えてあらぬ方向へと進んでいくのだ。

「あの~~僕はもう30歳のオジサンですし・・過去には恋愛経験もありますよ・・まぁ30にもなって恋愛経験が無いっていうのも気持ちが悪いですけどね・・ハハハ」

すると彼女はこう言うのだった。

「そんなこと関係ありません」

「・・・じゃぁ、こんな僕でもいいんですか?」

「はい」

「そうですか・・じゃぁ・・・僕で良ければ・・・結婚して下さい」

彼女は頷きながら返事をした。

「私で良ければ、どうぞよろしくお願いします・・」

会って3時間しか経っていない2人の結婚が決ってしまったのだった。(つづく)

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