
レストランに入ってはみたものの、彼女は下を向いて黙ったままである。
彼女に訊いてみた。
「あの~・・なに食べましょうか?」
「はい、なんでもいいです」
想定内の返事が返ってくる。
「・・じゃぁ・・エビフライが付いてるAランチでいいですか?」
「はい、Aランチでいいです」
・・・・・・・
〈Aランチ〉が旨かったのか不味かったのか、そんなことは覚えていない。
食べ終るとウェイトレスがやってきて、セットで付いているドリンクのオーダーを訊いてきた。
「コーヒーかオレンジジュースが付きますがどちらがよろしいですか?」
僕がコーヒー、彼女がオレンジジュースを頼んだ。
・・・・・・・
何も話さない訳にはいかないので、面白くもなんともない、超ド定番の質問を、僕は彼女に投げ掛けた。
「あの~趣味はなんですか?」
「はい、趣味というほどのもはありません」
「そうですか・・・僕はフルートなんかをかじっていますけど・・まぁ下手ですけどね・・ハハハ・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
それでもなんとか会話が成立するようになってきて、お互いの現在の状況を説明するまでになった。
そうして暫くのあいだ話していると、僕はなんだか不思議な感覚を覚えてきたのだった。
《この女性はたぶん僕の奥さんになる人なんじゃないだろうか?》
そして、話は僕の理性を飛び越えてあらぬ方向へと進んでいくのだ。
「あの~~僕はもう30歳のオジサンですし・・過去には恋愛経験もありますよ・・まぁ30にもなって恋愛経験が無いっていうのも気持ちが悪いですけどね・・ハハハ」
すると彼女はこう言うのだった。
「そんなこと関係ありません」
「・・・じゃぁ、こんな僕でもいいんですか?」
「はい」
「そうですか・・じゃぁ・・・僕で良ければ・・・結婚して下さい」
彼女は頷きながら返事をした。
「私で良ければ、どうぞよろしくお願いします・・」
会って3時間しか経っていない2人の結婚が決ってしまったのだった。(つづく)
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