No.337【邂逅の夏④】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.10.02 レストランに入ってはみたものの、彼女は下を向いて黙ったままである。彼女に訊いてみた。「あの~・・なに食べましょうか?」「はい、なんでもいいです」想定内の返事が返ってくる。「・・じゃぁ・・エビフライが付いてるAランチでいいですか?」「はい、Aランチでいいです」・・・・・・・〈Aランチ〉が旨かったのか不味かったのか、そんなことは覚えていない。食べ終るとウェイトレスがやってきて、セットで付いているドリンクのオーダーを訊いてきた。「コーヒーかオレンジジュースが付きますがどちらがよろしいですか?」僕がコーヒー、彼女がオレンジジュースを頼んだ。・・・・・・・何も話さない訳にはいかないので、面白くもなんともない、超ド定番の質問を、僕は彼女に投げ掛けた。「あの~趣味はなんですか?」「はい、趣味というほどのもはありません」「そうですか・・・僕はフルートなんかをかじっていますけど・・まぁ下手ですけどね・・ハハハ・・」「・・・・・・」「・・・・・・・」それでもなんとか会話が成立するようになってきて、お互いの現在の状況を説明するまでになった。そうして暫くのあいだ話していると、僕はなんだか不思議な感覚を覚えてきたのだった。《この女性はたぶん僕の奥さんになる人なんじゃないだろうか?》そして、話は僕の理性を飛び越えてあらぬ方向へと進んでいくのだ。「あの~~僕はもう30歳のオジサンですし・・過去には恋愛経験もありますよ・・まぁ30にもなって恋愛経験が無いっていうのも気持ちが悪いですけどね・・ハハハ」すると彼女はこう言うのだった。「そんなこと関係ありません」「・・・じゃぁ、こんな僕でもいいんですか?」「はい」「そうですか・・じゃぁ・・・僕で良ければ・・・結婚して下さい」彼女は頷きながら返事をした。「私で良ければ、どうぞよろしくお願いします・・」会って3時間しか経っていない2人の結婚が決ってしまったのだった。(つづく)
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