No.391【キノコ狩り】

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少年時代に、父と父の友人のオジサンと僕と3人で〈キノコ狩り〉に行ったことがある。

それは実に本格的な〈キノコ狩り〉で、道の無い急傾斜した山の中を歩き回るというものだった。

小学生だった僕は父たちの後を付いて歩くのだが、度々遅れをとって迷惑を掛けた。

こんなにも山奥に入るには理由がって、なんでも〈松茸〉よりも希少な〈コウタケ〉というキノコを採りたかったらしいのだ。

前が見えない程の藪の中を通り抜けると木々の間から木漏れ日が差し込む山腹に出た。

そこはなにか別世界のような雰囲気があって、足元を見渡すと、面白いくらいに色々な〈キノコ〉が生えているのだった。

踏みつけると真ん中から煙のように胞子を吹く〈ツチグリ〉、見るからに大きくて毒々しい〈紅テングタケ〉、笠がネバネバしている〈なめこ〉みたいなヤツ・・・

父がこの地方の名前で〈赤ナバ〉とか〈谷ワタリ〉とか呼んでいたものがあったが、学名は知らない。

その他、図鑑でも見たことがないような〈キノコ〉が沢山生えているのだ。

〈松茸〉が生えるところではなかったので、お目に掛かれなかったのが少し残念ではあった。

途中、父の友人のオジサンの姿が見えなくなって慌てたことがあった。なんでも、こんな里山でさえ遭難することがあるそうで、決して舐めて掛かってはいけないのだと父が言っていた。

山で道に迷ったからといって、やたらに動き回ると方向が分からなくなって、とんでもないところに迷い出るらしいのだ。

幸いオジサンはすぐに発見出来たので胸を撫で下ろしたのだった。

2時間ほど山の中を這い廻った結果、背負った籠の中は沢山の〈キノコ〉でイッパイになった。

籠の中には、「香り松茸、味シメジ」と言われる〈本シメジ〉も入っている。

そして、父たちが狙っていた、本命の〈コウタケ〉も予想以上に採れたばかりか、黒い〈コウタケ〉と言われる、幻の〈クロッコウ〉が採れたので大喜びしていた。それは〈松茸〉の比ではない程の超希少品種なのだった。

籠の中には食べられそうだがイマイチ得体の知れない〈キノコ〉も入っている。危ないから持って帰るべきではないのだが、持って帰るには理由があるのだ。

実は親戚のおばあちゃんに〈キノコ博士〉がいるのだ。そのおばあちゃんに掛かると、食べられるものか毒なのかを一瞬で見分けてくれるのだった。

おばあちゃんが貧乏な時代に、おそらくは身体を張って体得した能力なのだと思う。

捨てようと思っていた〈キノコ〉が、実は大変に貴重なものだったなんてことが度々あったのである。

そうして採ってきた〈天然キノコ〉で作った「キノコ汁」の旨さといったら、現在スーパーで売っている〈ハウスキノコ〉などとは比べ物にはならないのだ。

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