No.455【執念】

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4月~5月に植えるのがベターだという〈トマトの苗〉を、家内は2ヶ月遅れてプランターに植えた。

ところがこともあろうに、12月のに入ってから実が成ったのだ。全く季節外れのトマトの実が5~6個、枝先にブラ下がっている。

葡萄のデラウェアの粒くらいからピンポン玉くらいまでの大きさのトマトなのだが、1週間経ってもそれ以上は大きくはならないし、色も緑色のままなのである。

業を煮やした家内は実を全部モギ取って熟成させることにした。

しかし〈トマトの実〉は大晦日になっても一向に赤くはならないのだった。
幾度か家内に進言した。

「おいっ! そんなウラ成りトマト、もういい加減に捨てたらどうだ?」

しかし、家内は頑として聞き入れない。

「ダメッ❗️ 絶対に捨てないよ!勿体ないじゃん❗️ 熟成して赤くなったら食べるんだからね」

・・・・・・・

かくして正月 3賀日を過ぎた頃である。薄っすらと赤みを帯びた〈ウラ成りトマト〉が、家内の執念で食卓に上がったのだった。

無論、旨い訳がなかった。

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