No.228【妻のトイレ】

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長年夫婦をやっていると遠慮というものが無くなる。世の中の存在の中で一番安心できる相手が妻であり夫なのかもしれない。考えてみると、親子が過ごすよりも長い年月を共にするのが夫婦の〈深い縁〉であろうと思うのだ。

そこで、ウチの家内である。勿論、遠慮の無い存在である。と言うよりも、遠慮が無さ過ぎる存在だと言ったほうが当たっているのかもしれない。

さて、家内には当初から、所謂〈天然的要素〉があったのだが、その中のひとつにドアや戸を最後までキチンと閉めないというものがある。パッパラパ~ッとした性分なのだ。

だから彼女が通過したところのドアは必ずや数cmの隙間が開いているし、閉めた襖にしてもしかりだ。

普通の部屋や押入れならまぁそれでも良しとしよう。ところがトイレでもそうなのだから困るのだ。特に急いで入った時にその傾向が強い。そんな時、知らずにトイレの側を通ったりする場合もある。

すると怒ったようにドアが閉まるのだ。

「ガチャッ❗️」

『あっ!なんだよ、入ってたのか!でもいくら遠慮がないって言ったって開けっ放しでするなよなっ!ガチャッって閉めたりして感じが悪いじゃないかっ!・・誰も覗いたりはせんわぃ!なら初めから閉めてせんかぃ❗️』

と思いっ切り、心の中で文句を言うのだ。

なぜ直接言わないのかといえば、夫婦といえどもデリケートなことには触れないという優しさからだ、と言いたいところだがそうではない。1回注意した時に〈分かってるわよっ!〉と機嫌が悪くなったから言えないのである。

夫婦にだって遠慮があるのだ。

今度やったら《いっそのこと全部開けてやらんかいっ!》って・・言える訳ないかぁ。

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