2022-08

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No.15【赤いバスタオル】

当時の子供たちは、夏休みになると友達とよく川に泳ぎに行っていた。今のように危険だからダメ、などというような決まりもなかったので、夕方まで泳いだり魚を追いかけたりしたものである。「お~い。そろそろ帰ろうやぁ」遊び疲れた誰かが声をあげる。「そう...
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No.14【五円切手】

私が中学生のころは、おばあちゃんが店番をしている煙草屋がまだあった。そして、煙草屋では葉書や切手も扱っていたものだ。ある日、私は父親のお使いで「わかば」を買いに煙草屋に来ていた。そこへ、人の良さそうな作業服のおじさんがやってきて言った。「お...
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No.13【傷めた腰】

後頭部がストンと真っ直ぐだったため、彼は小学校の時から「絶壁頭のゼツゴロウ」と呼ばれていたが、当時はさらに酷い渾名であっても許される空気があって、みんな好き勝手な渾名を付け合っていたものである。ゼツゴロウもニコニコとその渾名を受け入れていた...
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No.12【エコーの女】

タバコを吸っていた若い頃、家内にタバコを買ってくるように頼んだことがある。当時、クルマを買い換えたばかりで金欠病だったので、僕は「エコー」を吸っていた。さて、買い物から帰ってきた家内はなぜか機嫌が悪いではないか。「もう~っ❗️エコーひとつく...
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No.11【挨拶】

「おい、お前さぁ、新人の女の子が5~6人集まってるから、例の件の研修、やっといてくれないか?」「はい、わかりました」上司に言われて僕は研修室へとやってきたが、少し緊張した雰囲気が漂っていたので、その場を和ませようと挨拶をした。「え~みなさん...
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No.10【イケメン】

「なぁ、甘いマスクって、どういうことだ?」「そりゃ、舐めたら甘いのさ」
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No.9【イヤホンの青年】

若い頃、東京にいた時の話である。カッターシャツに紺のスラックス、紺のニットタイに革靴、手にはアタッシュケースを持っている。そして退屈しのぎに秋葉原で買った豆ラジオを胸のポケットに忍ばせて、イヤホンでラジオを聴きながら、私はブラブラと街中を歩...
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No.8【オレにまかせろ】

勤めていたホテルは有名なシティホテルだったので、役員はといえば、大企業の幹部や政治家につながるような大物ばかりだった。そのホテルでは、何ヶ月かに一度の割り合いで役員会が開かれていて、その都度10名ばかりの役員が集まっていた。その日は役員会の...
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No.7【とまりますボタン】

バスに乗っていたら、男子学生二人の会話が耳に入ってきた。「オレ、こないだバスに乗ってたらさぁ」「あぁ」「おばあさんが降りようとしてボタンを押そうとしているわけよ」「うん」「でもなぁ、おばあさん、背が低いんでボタンに手が届かないんだ」「ふん」...
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No.6【幽霊とピアノ】

若かりし頃、私はあるピアノメーカーの調律師を養成する学校に生徒として在籍していた。ある日の講義でのこと、先生は、誰もいない音楽室から夜な夜なピアノの音がするので調べて欲しい旨の依頼があったという話をし始めたのだ。早速、問題の音楽室に出向いて...