No.175【部屋の主】

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東京滝野川での3畳ひと間の生活は楽しい想い出ばかりだ。狭い部屋なのに7・8人集まって飲み会をやったこともある。

銭湯・コインランドリーなどはよく利用した。不便と言えば不便なのだが、それが結構楽しかったのだ。

ただ1つ閉口したのが〈ゴキブリ〉の存在だった。東京の〈ゴキブリ〉は黒光りしていて大きい。大きいくせに《ガサッ!ガサガサガサッ!》っと、やたらと動きが速い。

部屋の隅の小さなシンクの下が物入れになっていて、食料や調味料などを入れていたのだが〈ゴキブリ〉はインスタントラーメンや砂糖の袋などを噛っていた。

・・・・・・・

ある夏の暑い夜、バイトが終わって蒸し風呂のように暑い部屋に帰って来た。ぶら下がっている紐を引っ張ると小さな蛍光灯が点灯して部屋が明るくなった。

《ゲッ❗️・・・・・》

10匹はいようか、〈ゴキブリ〉が部屋を占拠していた。
すぐに窓を開けて何とか追い出そうと手を振り回す。すると1匹の〈ゴキブリ〉がブ~ン!と勢いよく飛んで来て僕の鼻の先にとまった。

「わぁ~~~~っ❗️」

思わず叫んでしまった。

その夜は部屋にいることが出来ずに、近くの公園で夜を明かすことになったのだが、警察官に職務質問をされるというオチまでついた。

・・・・・・・

それ以来、僕は〈ゴキブリ〉がトラウマになってしまったので、あれから数十年経った今でも〈ゴキブリ〉のスリッパ叩き退治は家内に任せっきりなのである。

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